ここまでの話を整理して、新規開業・小規模 1 店舗・HPB + LINE 必須という条件に合う選択肢を 3 パターンにまとめました。
予約システムの月額だけを見ても意味がありません。実際には、ホットペッパーの掲載料や LINE の費用など、どのシステムを選んでも共通でかかる費用があります。まずそこから整理します。
1. 共通でかかる費用を知っておく
どの予約システムを選んでも、HPB と LINE の費用は共通で発生します。ここをまず把握しておくことが大事です。
ホットペッパービューティーの掲載料
HPB の掲載料はリクルートの方針で公式には非公開です。エリア(都心 vs 地方)、プラン、契約期間によって大きく変わるため、正確な金額はリクルートまたは代理店への見積もりが必要です。
| プラン | 月額の目安(税別) | 位置づけ |
|---|---|---|
| ライト / ライト S | 約 2.5 万〜5 万円 | 最下位プラン。小規模・個人サロン向け |
| シンプル | 約 5 万〜10 万円 | 中位プラン。バランス型 |
| バリュー | 約 10 万〜20 万円 | 上位プラン。露出が多く費用対効果が良いとされる |
| プラチナ | 約 20 万〜50 万円超 | 最上位プラン。大手・激戦区向け |
※ 同じプランでも都心部(渋谷・新宿・銀座など)は高く、地方は安い。同じ区内でも「丁目」レベルで料金が変わる仕組みです。
これに加えて:
- ネット予約手数料 2% — HPB 経由のネット予約で施術が完了するたびに、施術金額の 2% がかかる(例: 施術 10,000 円なら手数料 200 円)
- 最低契約期間 — 半年または 1 年。1 年契約のほうが月額は割安。途中解約は原則不可
- プラン変更 — 契約中のアップグレードは可能だが、ダウングレードは契約更新タイミングのみ
新規開業の小規模 1 店舗であれば、ライト〜シンプル(月 2.5 万〜10 万円)が現実的な選択肢になります。
SALON BOARD
無料。HPB に掲載すれば追加費用なしで使えます。
LINE 公式アカウント
| プラン | 月額 | 無料メッセージ数 |
|---|---|---|
| フリー | 0 円 | 月 200 通 |
| ライト | 約 5,000 円 | 月 5,000 通 |
| スタンダード | 約 15,000 円 | 月 30,000 通 |
開業初期はフリープランで十分です。お客様(友だち)が増えてメッセージ数が足りなくなったら、ライトプラン以上に移行します。
共通費用のまとめ
どの予約システムを選ぶ前の段階で、ざっくりこれくらいの費用がベースとしてかかります。
| 項目 | 月額の目安 |
|---|---|
| HPB 掲載料(ライト〜シンプル) | 約 2.5 万〜10 万円 |
| ネット予約手数料(2%) | 売上に応じて変動 |
| SALON BOARD | 0 円 |
| LINE 公式アカウント | 0〜5,000 円 |
| 共通費用の合計 | 約 2.5 万〜10.5 万円/月 |
この上に、追加で選ぶ予約 / 顧客管理システムの費用が乗ってくるイメージです。
お伝えする前に — 私のスタンス
ここから具体的なサービス名を挙げて提案していきますが、その前に大切なことをお伝えさせてください。
私は、ここで名前を挙げるサービスの営業担当でもなければ、紹介料やアフィリエイト報酬をもらっているわけでもありません。
どの会社とも利害関係はなく、純粋に 2026 年 4 月時点での調査と専門家としての判断に基づいて、今の状況で最も合理的だと考える選択肢をお伝えしています。当然ですが、状況が変われば推奨するサービスも変わります。半年後にはもっと良い選択肢が出てくるかもしれないし、今お勧めしているサービスが方針を変えて魅力がなくなるかもしれない。あくまで「今この瞬間のベスト」であり、永遠の正解ではありません。
美容・サロン業界のシステムを調べていて強く感じるのは、情報の非対称性です。サービスを提供する側は自社に都合の良い情報だけを伝え、不利な情報は隠す。営業力で契約を取り、データを囲い込んで解約しにくくする。価格は非公開、比較しにくい、乗り換えのハードルが高い。
グローバルに見ると、サービス同士が API で連携し合い、ユーザーが自由にデータを持ち出し、自分のビジネスに最適な組み合わせを選べるのが当たり前の世界です。でも日本のこの業界では、まだまだクローズドな囲い込みが主流です。
特定のサービスに肩入れするのではなく、中立的な立場で、お客様のビジネスにとって本当にベストな選択肢を、事実と根拠に基づいて提案する。これが私の信念です。
3 つの選択肢の全体像
3 つの案の月額と初期費用の全体像です(HPB ライト想定、LINE は無料プラン前提)。
3 Plans — Monthly Running Cost (Lower Bound)
- A 案 サロンコネクト(堅実スタート)¥3 万〜
- B 案 coming-soon(AI 時代に備える)¥4.5 万〜
- C 案 自社構築(本気の投資)要相談
| A 案 堅実スタート | B 案 AI 時代に備える | C 案 本気の自社構築 | |
|---|---|---|---|
| 構成 | SALON BOARD + LINE + サロンコネクト | SALON BOARD + LINE + coming-soon | SALON BOARD + LINE + 自社構築 |
| 初期費用 | 約 0 円 | 約 4.4 万〜5.5 万円 | 数十万円〜 |
| 月額ランニング | 約 3 万〜5.5 万円 | 約 4.5 万〜7.5 万円 | 要相談 |
A 案 — コストを抑えて堅実にスタートする
構成: SALON BOARD + LINE 公式アカウント + サロンコネクト
初期費用: 約 0 円
月額: 約 3 万〜5.5 万円(HPB ライト想定)
いちばんコストが軽い組み合わせです。まずは出費を抑えてお店を軌道に乗せることを最優先にしたい、ホットペッパーからの予約がメインになる見込み、最初から多機能なシステムは必要ない、というオーナーさんに向いています。
サロンコネクトとは
ひとことで言うと、「複数の予約サイトからの予約を 1 つの画面でまとめて管理するハブ」です。
たとえば、ホットペッパー、楽天ビューティー、minimo、OZmall など、複数の集客サイトに掲載していると、それぞれの管理画面で予約を確認しなければなりません。予約が入るたびに他のサイトの空き枠を手動で調整しないと、同じ時間帯に 2 件の予約が入ってしまう(ダブルブッキング)リスクがあります。サロンコネクトを入れると、これらの予約が 1 つの画面に自動で集約されます。A サイトで予約が入ったら、B・C サイトの枠を自動で減らしてくれる。キャンセルも自動反映。「各サイトの管理画面を行ったり来たりする」必要がなくなります。
サロンコネクトの料金(積み上げ型)
| 構成 | 月額(税込) | できること |
|---|---|---|
| 基本のみ | 3,980 円 | HPB・楽天・minimo 等の予約一元管理、顧客管理、ダブルブッキング防止 |
| 基本 + ネット予約 | 4,980 円 | 上記 + 自社の予約ページを開設 |
| 基本 + ネット予約 + LINE 連携 | 6,980 円 | 上記 + 予約完了・リマインド・キャンセルを LINE で自動通知 |
| フル装備(+ POS / 売上分析) | 13,960 円 | 上記 + 売上分析・CSV 出力・データ管理 |
初期費用: 0 円(現在キャンペーン中)、最低契約期間なし(1 ヶ月ごとの更新)、HPB 連携は基本料金に含まれる、PC 管理画面がしっかりしているのが特徴です。
A 案の良いところと注意点
初期費用 0 円、契約縛りなし、月額 4,980 円〜。とにかくリスクが低い。もし合わなければすぐに解約して別のサービスに切り替えられます。最初の一歩としてこれ以上ない安心感です。
注意点としては、カルテ機能は 2024 年に新規受付が終了しており、現在は導入不可。カルテが必要な場合は別のアプリ等で対応する必要があります。POS / 売上分析はオプション(+6,980 円/月)。LINE をもっと本格的に使いたい場合は、同社の別サービス「チャットコネクト」(月額 9,800 円〜)が必要です。
サロンコネクトは 2026 年 1 月に楽天ビューティとの API 連携を開始しており、外部連携に前向きな姿勢が見えます。

B 案 — AI エージェント時代にいちばん備えている(おすすめ)
構成: SALON BOARD + LINE 公式アカウント + coming-soon
初期費用: 約 4.4 万〜5.5 万円
月額: 約 4.5 万〜7.5 万円(HPB ライト想定)
予約管理・顧客管理・外部サイト連携を、PC のブラウザからしっかり管理できるシステムです。将来の AI 活用を見据えて、いちばん準備ができているシステムを選びたいオーナーさんに向いています。
coming-soon とは
美容室向けの総合型予約管理システムです。予約管理だけでなく、顧客情報管理、自動フォローメール / プッシュ通知、集計・分析、自社の予約ページやアプリの作成まで、お店の運営に必要な機能が広くカバーされています。「カミングメール」という独自の仕組みでは、お客様の来店サイクルをシステムが予測して、そろそろ次の来店時期ですよ、というお知らせを自動で送ってくれます。リピート促進を仕組みで回せるのが特徴です。
coming-soon の料金
| プラン | 月額(税込) | 初期費用 |
|---|---|---|
| Light | 14,300 円 | 33,000 円 |
| Standard | 23,100 円 | 33,000 円 |
- スタッフ 10 名まで追加料金なし。11 名以上は 5 名ごとに加算(小規模なら影響なし)
- HPB 連携はオプション: Light で +3,300〜4,400 円/月、Standard で +1,100〜2,200 円/月(+導入費 11,000 円)
- LINE 連携: Standard なら単独店舗で追加費用なし。Light では利用不可
- 電子カルテ: オプション(0〜3,300 円/月)
- 3 ヶ月以内の全額返金保証あり(初期費用は対象外)
新規 1 店舗であれば、まず Light で始めて、お店が安定してきたら Standard にアップグレードするのが現実的です。HPB 連携を追加すると、Light で月額約 17,600〜18,700 円になります。
なぜ coming-soon を推すのか — AI への本気度が違う
2026 年 4 月時点で、サロン向け予約システムの中で AI エージェント時代に向けた技術投資がいちばん積極的なサービスです。
- AI メニュー自動提案の国際特許を出願(2025 年 4 月)— お客様の来店履歴やカルテのメモを AI が分析して、一人ひとりに最適なメニューを自動で提案する技術。サロン業界で AI 技術に特許レベルの投資をしているサービスは、調査範囲では coming-soon だけ
- 「Salon Controller Agent」β版をリリース(2026 年 3 月)— 複数の予約サイトの管理を AI / RPA で自動化するエージェント。関連サービスの CS ネクストを利用していれば追加費用なしで利用可能
- すきま時間ブロック特許を取得(2024 年 12 月)
つまり、coming-soon は「将来 AI と連携できるかもしれない」ではなく、「すでに自社で AI / RPA エージェントを作り始めている」サービスです。
注意点: A 案に比べると月額が約 1 万円高い、HPB 連携がオプション、初期費用が 33,000 円かかる(3 ヶ月返金保証あり)。必要な機能とプランの見極めが大事です。
C 案 — 自社専用システムをゼロから構築する
構成: SALON BOARD + LINE 公式アカウント + オープンソースベースの自社専用予約・顧客管理システム
初期費用: 要相談(数十万円〜)
月額: HPB 掲載料 + 保守・運用費(個別見積もり)
A 案・B 案とは根本的に発想が違います。既存の SaaS に頼らず、自分たちのお店に完全に最適化したシステムをゼロから構築するという選択肢です。お店が軌道に乗り、多店舗展開やブランド化を見据えている段階、「AI エージェントとの完全な連携」を本気で実現したいオーナーさんに向いています。
なぜ既存 SaaS ではなく自社構築なのか
正直に言うと、2026 年 4 月時点で市販されているサロン向け SaaS の中に、「AI エージェントと自由に連携できるシステム」は存在しません。唯一 API を公開している STORES 予約も、読み取り専用で美容室に特化した機能は弱く、それでいて月額 3〜4 万円かかります。業界特化でもない中途半端な SaaS にそれだけのコストをかけるくらいなら、オープンソースの予約システムをベースに、自分たちのお店に完全にフィットしたシステムを構築したほうが、はるかに合理的です。
自社構築なら:
- API も MCP も自由に実装できる — AI エージェントとの連携を最初から設計に組み込める
- データは 100% 自分たちのもの — 「データの人質」問題が根本的に解消される
- お店の業務に完全に合わせた機能 — 既存 SaaS の「ここが足りない」「ここは余計」がなくなる
- HPB や LINE との連携方法も自分たちで設計できる — API がなくても、ブラウザ操作の自動化(RPA)など、柔軟なアプローチが取れる
- SaaS の月額利用料に縛られない — 初期構築にコストはかかるが、「機能を使うために毎月定額を払い続ける」構造から脱却できる
注意点: 初期の構築に時間とコストがかかる、新規開業の段階でやるものではない、構築・運用には専門知識が必要。まずは A 案や B 案でお店を回し、事業が安定してから着手するのが現実的です。
お会計・決済はどうするの? — 別カテゴリで詳しく
予約システムとセットで考えなければならないのが、お店のレジ(POS)と決済端末です。
実は SALON BOARD には「スマート支払い」というオンライン決済機能が標準で搭載されていて、HPB 経由予約のお客様についてはお財布を出さずに退店してもらえる仕組みがあります。ただし飛び込みのお客様や現地での PayPay / Suica 決済には対応できないので、別途 POS / 決済端末が必要です。
これについては POS・決済 のカテゴリで 4 本の記事にまとめて詳しく扱います。Airペイ、Square、STORES 決済の比較と、AI 時代の選び方です。
結論 — まずは現場を回すことが最優先
推奨は A サロンコネクト案 または B coming-soon 案です。
- コストを最優先にするなら A 案。HPB 込みで月額約 3 万〜5.5 万円と、3 案の中で最も軽い。楽天ビューティとの API 連携を開始するなど、外部連携にも前向きな姿勢。「まずはお店を軌道に乗せてから考えたい」というオーナーさんに向いています
- AI エージェント時代への備えも含めてバランスよく選ぶなら B 案。月額は約 1 万円高くなりますが、AI メニュー提案の国際特許出願、RPA 予約管理エージェントのリリースなど、業界で最も AI 時代に向けて動いているサービスです
いずれの案を選んでも、今からデータのバックアップをしっかりやっておくこと。これが、将来の選択肢を最大限に残すための鉄則です。
どのシステムを選んでも「選んだ後の運用」が超大事
システムを導入して終わりではありません。データの主権を自分たち側に残すために、以下の 4 つを意識してください。
- お客様データの定期バックアップ — CSV ダウンロード機能を使って、月に 1 回以上、お客様情報と予約データを手元に保存しておく。パソコンや Google ドライブなど、予約システムとは別の場所に。万が一のシステム障害やサービス終了のときの保険にもなります
- LINE 公式アカウントを「自分たちの資産」として育てる — 予約システムは将来乗り換える可能性がありますが、LINE 公式アカウントのお友だちリストは、予約システムに依存しないお店独自の顧客接点です。お友だちの数を増やし、定期的にメッセージを送って関係を維持する
- ホットペッパーだけに頼らない集客チャネルを育てる — HPB は強力な集客ツールですが、掲載料がかかり続けますし、HPB の都合でルールが変わる可能性もあります。Instagram、Google ビジネスプロフィール(MEO)、お店のホームページなど、自分たちで管理できる集客チャネルも並行して育てていく
- 長期の契約縛りに注意する — 「3 年契約で月額が安くなる」というプランには注意が必要。3 年後には AI エージェントの状況が大きく変わっている可能性が高い。できるだけ短期で解約できるプランを選んでおくのが安全
参考: 月額コストの早見表
| 項目 | A サロンコネクト案 | B coming-soon 案 | C 自社構築案 |
|---|---|---|---|
| HPB 掲載料(ライト〜シンプル) | 約 2.5 万〜10 万円 | 約 2.5 万〜10 万円 | 約 2.5 万〜10 万円 |
| SALON BOARD | 0 円 | 0 円 | 0 円 |
| LINE 公式アカウント | 0〜5,000 円 | 0〜5,000 円 | 0〜5,000 円 |
| 予約 / 顧客管理 | 約 4,980 円 | 約 14,300 円〜 | 個別見積もり |
| 初期構築費 | — | 33,000 円 | 要相談(数十万円〜) |
| 月額ランニング合計 | 約 3 万〜5.5 万円 | 約 4.5 万〜7.5 万円 | 要相談 |
※ HPB 掲載料はライトプラン(約 2.5 万〜5 万円)を想定
※ 金額は 2026 年 4 月時点の調査に基づく
※ C 案は初期構築費に加え、保守・運用・AI 利用にかかる実費が発生します

予約システムの先にある未来
ここまで、予約システムの選び方を中心にお話ししてきました。でも、本当にお伝えしたいことは、予約システムの話だけではありません。
予約システムは、お店という「体」のほんの一部です。ここまでの話は、いわば「まず心臓(予約)の血管をちゃんとつなぎましょう」という第一歩。本当の価値は、お店の体全体の血液の巡りが良くなったときに生まれます。
少しだけ、想像してみてください。来月、お店で新しいカラーメニューのキャンペーンをやりたいと思ったとします。AI エージェントに一言話しかけるだけで、過去の顧客データから最適なターゲットを抽出し、生成 AI がキャンペーン用のリール動画を作り、HPB にメニューを掲載してクーポンを設定し、LINE 公式から過去のカラー客にパーソナライズされた案内が自動で配信される。キャンペーンが始まって予約が入れば、売上データが自動記録、カラー剤の原価と人件費から粗利が自動計算、在庫が少なくなれば発注のお知らせ、月末には税理士向けのレポートのドラフトが自動で用意される。
一つひとつのパーツ(生成 AI による動画制作、LINE の自動配信、会計データの自動入力、請求書の AI 読み取り、データ分析)は、すでに実用化されているか、実用化の目前にあります。足りないのは、これらをお店のビジネス全体としてつなげて設計する人だけです。
予約システムは入り口にすぎません。でも、入り口をどう選ぶかで、その先の景色が変わります。
